別れ。

 

1月下旬のある日
海から上がって
松戸市みのり台
久保田鮮魚店に
いつも通り電話する。

予め
魚の種類を聞いておいて
刺身にしておいてもらうのだ。

「こんにちは
今日は何がありますか?」

「あれ言ってなかったっけ?
今月で閉めちゃうから
もう仕入れ行ってないの。
ごめんね。」

ガ~ン・・・(>_<)

愛媛から取り寄せた
「紅マドンナ」がうまかったから
お裾分けに持って来てたのに。

「とりあえず向かいます・・・。」

わたし
「もう、早く言って下さいよぉ。」

ご主人さん
「ごめんねぇ。
元気なうちに
(引退しよう)
と思ってさ。」

もう
この店を継ぐ人はいない。

以前に聞いていたから知っていた。

いつか
こういう日が来るかもしれないとも
思っていた。

「出来るだけ長生きしてね。
せめて
うちの子が大きくなるまで。」
そう話して来たけど
ついにお終い。

今までの写真から。

冷蔵庫には
季節の魚が
いろいろ並んでる。

この冷蔵庫を見ながら
今日は何にしよっかなと
ワクワクする。

女将さん
おすすめの
鮎めしは
最高!

時折ある
時鮭に興奮!

土用の丑の日は
こうやって
一日中
うなぎを炭火焼きにする。

練り物も豊富にある。

この
メヒカリも
ウマかった。

フライ用に
アジをその場で
さばいてもらう。

こういう
手仕事を見てるのが好きだ。

珍しい
鮎の開き。

僕は
魚だけを買いに
行ってたんじゃない。

ご主人さん
女将さんに
会いに行ってたんだと思う。

お二人の
たなごころが
仕事してるとこを
見に行ってたんだと思う。

だって
他にも魚屋さんは
いろいろある。

でも
久保田さんの
魚じゃないと
ダメだったんだから。

あかみさんは
少し涙ぐみながら
奥から
出てきた。

「ごめんね。
奥さんによろしくね。」

もうこうやって
今日は
この刺身と
あの酒で
一杯。
とか

明日の朝は
ブリかまの塩焼きだぁ。
とか
久保田さんの店先でいろいろ
妄想することもなくなってしまった。

今日はもう
食欲がない。

酒を飲んで
早々に寝てしまった。