病気ではなく人を診る
すいませ~ん 遅くなりました~ (/ _ ; )
東京新聞 香山リカさんの 記事から
精神外科医の私は、 診察室でときどき こんな話を聞かされる。
「先生、信頼している霊能セラピストから、 精神科の薬はやめなさいといわれるんです」
「親戚からどんな病気も治る 奇跡の温泉を紹介されたので、 もう通院はやめます」
こういったいわゆる民間療法、 代替療法の人気は高く、
「西洋医学に比べて安全で効果的」 と思われている場合が多い。
私としてはもちろん、 「なんとか薬や通院はやめないように」 とその必要性を説明するのだが、
そうすると 「患者さんが減ると 困るから必死なんですね」 とかえって不信感を 持たれてしまう場合もある。
では、どうして 「西洋医学は危険」と拒絶され、 「民間療法は信頼できる」 と思われるのだろう。
いちばんの理由は、 いま病院で行われている治療が 「病気」や「病気の部分」だけをみて、
「その人本人」みていないと いうことにあるのだろう。
私もつい、パソコンの 電子カルテに目をやって
「えーと、うつ病で不眠、 集中力の低下、気分の 落ち込みがあるのか」と思い、
症状の話だけで診察が 終わってしまうことがある。
その人としては、もっと 「顔色もまあまあですし、 表情もいいですね」と自分の全体、
「お子さんがいるんですよね? 育児はいかがですか」と 生活の全体に目を配ってほしい、 と思うに違いない。
その点、民間療法や 代替療法では、 診断や症状よりもまず 「その人」をみようとする。
そこで「ちゃんと向き合ってもらえた」 という満足感が得られるのだろう。
とはいえ、いくら患者さんが 安心できるからといって、
必要な医学的治療までが 中断されることは あってはならない。
「病気ではなく人を診る」 という原点に立ち返らなければ、 とあらためて思う秋である。